テンペラ画のための地塗り① 前膠と綿布張り

2022-02-24

 テンペラで絵画制作する場合、吸収性(水性)の下地が必要です。わたしは普段、キャンバスまたは木製パネルを支持体に、白亜地または石膏地を塗っております。今回は木製パネルを白亜地仕上げにしていく工程を数回に分けてご紹介いたします。

 まずは “前膠と綿布張り” から解説していきます。YouTubeでは動画で解説しておりますので、合わせてご覧になると分かりやすいかと思います!

OKUAKI STUDIO art channel【テンペラ画のための地塗り①_膠水制作と前膠】

https://youtu.be/ZsnjhkN-xtc

OKUAKI STUDIO art channel【テンペラ画のための地塗り①’_綿布張り】

https://youtu.be/sF-JTZdcums

前膠と綿布張りの準備

準備するもの
  • シナベニヤ木製パネル
  • 薄手の綿布
  • 兎膠
  • 刷毛(軟毛)
  • ハサミ
  • ボウル
  • ビーカー
  • はかり

膠水を作ります。

 膠は画材店で購入できます。膠と名の付く商品は色々ありますが、ここでは兎膠を使用します。膠は乾燥した状態ですので、水で膨潤させてから湯煎で溶かします。

 水と膠の割合は、水10:膠1 が基本です。しかし兎膠は強力なので、白亜地の時は 佐藤一朗 著『絵画技術入門(美術出版社)』にある、水100:膠7 の割合を選んでいます。

水10:膠1(水1000ml:膠100g) 水100:膠7(水1000ml:膠70g)

綿布を用意します。

 木製パネルの側面まで余裕で覆える大きさにカットした綿布を用意します。綿布は手芸店で購入します。手芸店ではシーチングと呼ばれており、薄手のものから厚手のものまで揃っています。ここでは薄手のシーチングを選びます。

パネルの表面を整えてから前膠する

木製パネル全体に一度水を塗り乾かします。

 木地の繊維が逆立つなど若干のデコボコが現れますので、紙やすり(240番くらい)に当て木をして平滑に研磨します。ヤニが出そうな枠材が使われたパネルの場合、ヤニ止めする(わたしはテンペラ用のアルコールニス、またはフィキサチーフを塗っています)。

前膠を塗布します。

 柔らかい毛足の刷毛が使いやすいと思います。余分な膠水を残さないように、満遍なく均一に塗り上げます。もちろん側面も塗ってください。

綿布に膠水を浸透させる

1日しっかり乾かします。木板表面のザラつきを紙やすりで軽く研磨します。

 パネルの表面にたっぷり目に膠水を塗り広げます。その上に綿布を重ね広げ、両手を使って密着させるように綿布に膠水を浸透させます。

全体に膠水をたっぷり置く
パネルに綿布を重ね置き、染み込ませるように膠水を塗布

 綿布の上に膠水を塗り広げます。綿布をずらしながら綿布の端まで全てに膠水を塗り、この後の作業中に綿布が乾いてしまわないようにしっかりと浸透させます。

綿布を木製パネルに重ね、張り込む

綿布を一度持ち上げて裏返し、パネルの中心と綿布の中心が合うように重ねます。

パネルから綿布を剥がし上げる
綿布を裏返してパネルに置き直す
空気を追い出しながら張り付ける

 綿布とパネルの間の空気を端へ押し出すように手のひらを使い密着させます。この時、綿布を必要以上に引っ張る必要はありません

綿布の四角をカット

綿布の四角にハサミで切り込みを入れる

次は側面を張り込むために、綿布の四角をカットしていきます。

 側面への張り込みの際、角をキレイに折りたためば良いのですが、布が重なることで色々と面倒なことが発生しますので、切り込みを入れ、さらに余分な布を切り落とします。

綿布カットの仕方

側面と裏面への張り込み

切り込み処理が終わったらベロがついている方から張り始めます。

 側面と裏面(綿布が張り込まれる範囲)に膠水を塗ります。空気を追い出しながらピッタリ張ります。反対側も同様に張り込み終わったら、ベロの無い方を張ります。

面と裏面へ綿布を張り込む順番
裏面もきれいに張り込む
綿布張り完了

 表、側面、裏面、空気などが入り込んでいないか、剥がれている箇所はないか、しっかりチェックして完了です。一日乾燥させます。

一日乾かします

 一日乾かしたら、綿布が浮いている箇所がないかチェックします。もし浮いているところを見つけたら、膠水で貼り付けます。筆や刷毛が使えない場所は注射器などで膠水を注入するか、綿布の上から膠水を浸透させて貼り付けると良いです。

 以上で “テンペラのための地塗り・前膠と綿布張り” の解説を終わります。ここまでで大切なことは色々ありますが、ひとつだけ上げるなら “支持体である木製パネルと綿布の間に空気を残さないこと” だと言えます。

次回は白亜地作りです!