テンペラ画のための地塗り③ 白亜地塗布

白亜地塗布以前の作業は?

 白亜地を塗布する前の作業である “綿布張り”と“白亜地作り” に関しても OKUAKI STUDIO では解説しております!下記リンクからご覧ください。

準備するもの

準備するもの
  • 白亜地
  • 刷毛
  • ゴムベラ
  • 紙やすり(240番くらい)
  • 当て木

 塗布用の刷毛は、軟毛で含みの良いものが使いやすいです。穂幅は地塗りを施す画面のサイズにもよりますが、70mm以上はあったほうが良いと思います。そしてあまり厚さのないものがオススメです。わたしは日本画用の羊毛刷毛を使っています。

二本の刷毛と定規
わたしが使っている刷毛

白亜地塗布の順番

 白亜地は均一な塗りを数回重ね、研磨することで平滑面を作り出します。

塗布は5回〜7回ほど重ねると平滑面が作りやすいと思います。好みによっては5回以下、または7回以上でも問題ありません。塗り重ねのタイミングは、前の塗りが乾いてからです。

白亜地塗布の説明イラスト
白亜地塗布の順番

 均一な塗りのコツは、前の塗りの方向と交差するように重ねていくことと、“一刷毛の量” を一定にすることです。ある時は刷毛から白亜地が滴るほどたっぷりと含ませ、ある時はボウルの端で絞る、などのように “一刷毛の量” にムラがあると均一でなくなるし、平滑面を作るのも難しくなってしまいます。

作業工程を画像で解説

 刷毛の幅を利用して “一刷毛の量” を均一に保つイメージで塗り進めます。

白い下地を刷毛で塗っている
一刷毛目 / 刷毛の幅を保ちながら均一に塗り伸ばす。
白い下地を刷毛で塗っている
二刷毛目 / 刷毛の幅を保ちながら均一に塗り伸ばす。

 一層目の塗布が完了したら乾くのを待って二層目へと進んで良いのですが、わたしはここに一仕事挟んでいます。それはゴムベラを使って綿布の布目に白亜地をグッと押し込む作業です。この作業を挟むことでピンホールの数を減らすことができ、きれいな下地の完成を望めます。

白い下地をゴムベラで塗っている
綿布の布目を埋めたいので、ゴムベラで押すように塗り込む(一層目だけ)

 ゴムベラで押し込み塗ったら、刷毛でヘラの跡を消します。この時、刷毛に新しい白亜地を含ませる必要はありません(含ませないでください)。

白い下地を刷毛で塗っている
ゴムベラで押し込んだら、白亜地を含ませていない刷毛で馴染ませる(一層目だけ)

 二層目からの塗り重ねは、前の塗りが乾いてから行います。また、前の塗布方向と交差するように重ねていくことを忘れないように。

白い下地を刷毛で塗っている
前の層での塗布方向と交差するように塗り重ねていく

 二層目が乾いたら、三層目→四層目→軽く研磨→五層目→六層目→仕上げの研磨、と進めて白亜地を完成させます。

白亜地塗布時の注意点

 白亜地は塗布の度に湯煎に掛けると良いです。特に冬は気温が低いので、白亜地の中の膠水が直ぐにドロッとしてきます。湯煎をせずにそのまま塗布し続けると、塗ムラが出来てしまい結果的に余計な手間を掛けなくてはいけなくなります。

また、塗布の前に必ず白亜地全体を混ぜ直します。この時、空気を含ませないようにゆっくりと丁寧に撹拌し、白亜地を均一にしておくことが大切です。

材料や時間など、無駄を生み出さずスムーズに作業を進めていくには、手間を惜しまないことが大切です。

工程順、塗布面の変化

 塗布を重ねたり、研磨したり、その時々の表面画像をご覧ください。画像クリックで少し大きな画像で見ることができます。

塗布面のアップ
白亜地塗布、1層目
塗布面のアップ
白亜地塗布、3層目
塗布面のアップ
白亜地4回塗布後に軽く研磨したところ
塗布面のアップ
研磨後に白亜地を2回塗り重ねたところ
塗布面のアップ
塗布面を研磨して平滑に仕上げる

最後に

 いかがでしたでしょうか。“テンペラ画のための地塗り” ということで、3回に渡って その方法を紹介させていただきました。

 “地塗り剤の材料を揃え、時間を掛けて手作りする” のは、ちょっとした物好きがすることかもしれません。今は便利なものがいっぱいありますから。しかし、絵を描くという行為は “準備” している時間も思考を巡らせているものだと思います。瞬発的な表現も素晴らしいですが、ゆっくりと支度をしながら少しずつイメージを明確にしてく表現スタイルも、また素晴らしいと思っています。