Xアルバムのドローイングは必見!!! “フランシス・ベーコン -バリー・ジュール・コレクションによる-”

 2021年4月20日から “フランシス・ベーコン -バリー・ジュール・コレクションによる-” が神奈川県立近代美術館・葉山に続き、渋谷区立松濤美術館で始まっています!この今回は展覧会概要会場状況チケット購入バリー・ジュール氏とは?Xアルバムついて、紹介していきます。

“フランシス・ベーコン -バリー・ジュール・コレクションによる-” 展覧会概要

フランシス・ベーコン展のチケット

 フランシス・ベーコン(敬称は省略させていただきます)は1909年アイルランドのダブリンで英国人両親の間に誕生、画家としてのベーコンはロンドンを拠点としながらパリ、マドリード、ニュー・ヨークなどで活動しました。世界的な画家であるベーコンは、アカデミックな芸術教育は受けておらず、いわゆる独学で自身の絵画表現を確立していった魅力的な人物なのです。

 日本では1983年に東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、愛知県美術館で45点の作品による展覧会が開催され、30年後の2013年に東京国立近代美術館で3月〜5月、6月〜9月には豊田市美術館で “フランシス・ベーコン展” を開催、33点の代表的な油彩作品が展示されました。わたしはこの展示を2回見に行きました!

そして今回の “フランシス・ベーコン -バリー・ジュール・コレクションによる-” は、3回目の大規模な展示となります。今回の展示が前2回と大きく違うところは、ドローイング作品(約130点)が中心である、という点です。これらの作品はバリー・ジュール氏のコレクションによるもので、日本での公開は初となります。

ベーコンのファンならば勿論ですが、美術ファン必見の素晴らしい展覧会です。

会場の様子は?

 今回わたしが松濤美術館を訪れたのは4月23日(木)の10:30ごろ。チケット販売の窓口に並ぶ人もなく、展示会場にも数人の鑑賞者がいるのみで、大変ゆうゆうと鑑賞できました。

松濤美術館では、

地下の第一展示室に 《Xアルバム》《ワーキング・ドキュメンツ/画家が生きた世紀の、あらゆる人々の姿》 の二章、そして 《参考資料/ポスター》 を展示。

二階の第二展示室に 《ワーキング・ドキュメンツ/人間という動物:その筋肉の運動について》《ワーキング・ドキュメンツ/他のアーティストのイメージの複製を利用する》《書籍等》《油彩画》の四章が展示されています。

第一会場へ入ると “Xアルバム” が迎えてくれるのですが、この “Xアルバム” を見るだけでも大変な価値があります!時間を掛けてじっくりと、思い残すことなく鑑賞いたしましょう。

チケット購入に関して

 松濤美術館では現在(2021年4月24日)のところ、土曜、日曜、祝日および6月8日(火)〜13日(日)以外の開館日は日時指定予約の必要はありません。しかし今後どうなるか分からないので、お出かけ前に必ず美術館公式HPをご確認ください

渋谷区立松濤美術館 公式HP:https://shoto-museum.jp

バリー・ジュール氏とは?

フランシス・ベーコンの展覧会図録と文庫本
『フランシス・ベーコン -バリー・ジュール・コレクションより-』展覧会図録と『フランシス・ベイコン・インタヴュー』デイヴィッド・シルヴェスター著/ちくま学芸文庫

 バリー・ジュール氏とは何者なのか?彼はベーコンのアトリエ(ロンドンのサウス・ケンジントン地区リース・ミューズ7番地)の隣人であったことがきっかけで、彼の身の回りのお世話をするくらい親しく交流するようになった方です。

 展覧会図録にはバリー・ジュール氏が書き下ろした29ページによるエッセイが載っており、ベーコンと過ごした日々を様々なエピソードと共に綴っています。西村画廊さんとの出会いや、三島由紀夫氏、三船敏郎氏、など日本の人物についても触れられているところも大変興味深いです。ジュール氏は日本に関係するエピソードを一生懸命思い出してくれたんですね、きっと。

また、大英博物館で偶然出会ったテレンス・スタンプ(敬称は省略させていただきます)をベーコンが知らなかった(気付かなかった?)ことや、スタンプが主演の “テオレマ” で、彼演じる “訪問者” が《内気な青年にベーコンの画集を見せながら誘惑するシーン》がある、とのことも書かれておりました。これに関しては大変気になりましたので、さっそく “テオレマ” を鑑賞しようと思います。

 ベーコンの作品が使われた映画でわたしが知っているのは、クリストファー・ノーラン監督/レオナルド・ディカプリオ主演の “インセプション” です。

わたしはこの《OKUAKI STUDIO art blog》を始める前にグーグルのBlogerでブログを書いていたことがあります(現在は閉鎖)。2013年のフランシス・ベーコン展(東京国立近代美術館)のときにも記事を書きました。そのときの  “絵日記” をご覧ください!画像をクリックすると少し読みやすく拡大できます。

フランシス・ベーコン展のイラスト
2013年『フランシス・ベーコン展(東京国立近代美術館)』開催時のブログ(旧OKUAKI STUDIO)記載イラスト

Xアルバムについて

 コレクションのなかで、「Xアルバム」と呼ばれる一群のドローイングの総称は、それらが綴じられていた、19世紀後半のものと思われる古いアルバムに由来する。もとは写真用だったアルバムの赤い表紙と裏表紙には、それぞれ大きく黒い「X」がのマークが描かれていた。

“フランシス・ベーコン -バリー・ジュール・コレクションによる-”展覧会図録より

 “Xアルバム” について展覧会図録には上記のように解説されています。

なんでもこのアルバムには68枚のドローイングやコラージュが存在していたが、内57枚はテート・ギャラリーに、今回のコレクションは残りの11枚になるそうです。

11枚のドローイングの中にはベーコンの代表的な作品との関連を彷彿させるものが含まれています。ドローイングは表裏の表面に描かれており、ボロボロです。でも、それがいいのです!「ここからベーコン作品が生まれるのだ!」と強く感じさせる姿をしているのです。

リース・ミューズ7番地のベーコンの自宅兼スタジオの写真を見ると、スタジオの床は色んなものがごちゃごちゃ置かれていて、ものすごく雑然としています(ゴミ屋敷風です)。思いついては描いてポイっとして、拾って描いてまたポイっとして、それは言わばベーコンの頭の中なのでしょう。

美術館に展示された “Xアルバム” はきれいに額装されているけれど、その中にはまだ整理されていない思考とスタジオ内のリアルな空気感が今も存在しています。それは “ワーキング・ドキュメンツ” にも言えることで、こちらの方がベーコンの執着や、切望、痛みなどが分かりやすかもしれません。

ドローイングやスタジオからは全てを混沌へ落とし込んでいく姿勢が感じられますが、一方で同フロアのキッチンには秩序があり整然としています。食器は片付けられ、壁には自身の作品写真をきれいに貼り付けてあるのです。雑然としたスタジオに対して整然としたキッチン。コントラストの強いこの空間もまた “Artistフランシス・ベーコン“ のドローイングなのかもしれません。

展覧会情報

松濤美術館のフランシス・ベーコン壁面案内板

展覧会名:“フランシス・ベーコン -バリー・ジュール・コレクションによる-”

展覧会ページ:https://shoto-museum.jp/exhibitions/190bacon/

会場:渋谷区立松濤美術館 公式HP:https://shoto-museum.jp

会期:2021年4月20日(火)~ 6月13日(日)

休館日:月曜日(ただし、5月3日は開館)、5月6日(木)

開館時間:午前10時~午後6時(最終入館は閉館30分前までです。)

※ 展覧会情報は美術館HPより引用させていただきました。入館料に関しては “展覧会ページ” をご覧ください。