作品no.4 “生えるもの”

2023-06-01

今回はわたしの作品の原点と言っていい記念すべき作品『生えるもの』を紹介したいと思います。

大学の卒業制作

『生えるもの』 1621×2272mm / 1994-1995年制作 / 木枠・麻布・エマルジョン地・練り込みテンペラ ・油彩・蜜蝋

 『生えるもの』は大学の卒業制作作品で、1994年から1995年の1月くらいに掛けて制作したものです。制作中の年末年始、大学は冬休みでアトリエは使用不可。作品を大学から一旦自宅へ運び込み、必死で描き続けていたのを思い出します。

今思えば、そこまでする意味はないと言いきれますが、当時のわたしは、たとえ数週間とはいえ “作品を見ずに過ごせなかった” のだと思います。

平面絵画へのこだわり

 東京芸術大学に在学中の4年間、たくさんの絵を描きました。別に絵を描かなければいけない訳ではなかったのに、何故だかわたしは平面絵画以外の表現方法を取っていませんでした。ですので、卒業制作も当たり前のようにキャンバスを準備して颯爽と制作に取り掛かったのを思い出します。

 わたしはなぜ平面絵画に固執していたのでしょうか?

憧れている作家の作品が平面絵画であることが多かったから、複雑な思考空間を二次元に落とし込むことが快感だから、絵具という物質が好きだから、描くという行為自体が好きだから、描いている自分が好きだから、など色々と理由は上げられますが “なぜ平面絵画でなければいけないのか” という明白な理由は、、、実は今も見つからないのです。

『生えるもの』

 卒業制作の作品には『生えるもの』というタイトルを付けました。具体的なモノやコトが存在せず混沌とした画面はわたしの頭の中に似ています。何ものにもなっていないが、ほんの少しのアクションが加わるコトで何かが生まれ出るかもしれない、そんな思いから『生えるもの』としたのです。

 表現者にとって “考えること” は制作へのエネルギーであり、作品の種のようなものだと思います。『生えるもの』は、“自分について” と “作品について” さらには “双方の関係性について”、表現者としてそれらを考えることの必要性を知るきっかけとなった作品なのです。

台東区の所蔵作品として

 この作品は嬉しいことに大学がある台東区から賞をいただき、区の所蔵作品として大切に保管されています。

台東区民だけにとどまらず、多くの方々に見ていただけるよう台東区長賞展の開催、区役所内の台東アートギャラリーでの展示、区のHPで歴代の受賞作品を公開するなど、とっても力を入れてくださっています。

台東区ヴァーチャル美術館

平成6年度『生えるもの』奥秋由美 https://www.city.taito.lg.jp/virtualmuseum/award/award_02/award_0202/014.html

そして最近ではケーブルテレビで『台東区長賞ギャラリートーク』と称した番組も放映、昨年末にはわたしと「生えるもの」の撮影もしていただきました。番組はYouTubeで見ることができますので是非ご視聴くださいませ!

YouTube:台東区公式チャンネル

台東区長賞ギャラリートーク第二回 〜平成6年度台東区長賞作品『生えるもの』奥秋由美〜
https://www.youtube.com/watch?v=YtWAAfv1VyA

わたくしのYouTubeチャンネルでも収録時のちょっとした様子を動画にしております。合わせてご覧くださいませ!

YouTube:OKUAKI STUDIO art channel

ギャラリートークの収録がありました!!! https://youtu.be/T9oJh-piNR4

『生えるもの』作品データ

作品タイトル:生えるもの

制作年:1994 – 1995

素材:木枠・麻布・エマルジョン地・練り込みテンペラ・油彩・蜜蝋

サイズ:1621×2272(mm)