“ジョン・バージャーと4つの季節” を見て

 こんにちは、OKUAKI STUDIO です。昨年公開された映画『ジョン・バージャーと4つの季節』ですが、見たいと思いつつ見そびれたままでした。わたくしにはよくあることなのです。

昨年のいつだったか予告編か何かで、ニコッと微笑んでいるティルダ・スウィントンの映像に「わ〜、見たい!」と思ったのですが、まんまと見そびれていたのです。

ジョン・バージャー生誕100年記念

 それが何と “ジョン・バージャー生誕100年記念” として上映があることを発見!8月8日アップリンク吉祥寺にて、一回こっきりの上映です。

今度は絶対見逃すまいと、張り切って行ってまいりました。映画終了後には、金聖源さん若林恵さんのトークイベント、さらに交流会まで付いているというスペシャル上映です。

 金さんはこの映画の配給会社の主宰を務めてらっしゃるとのこと、わたくし勉強不足で存じ上げませんでした。若林さんはYouTubeでお話ししているお姿を何度か拝見したことがあり、一方的に存じ上げておりました。トークイベント、大変興味深く聞き入りました。交流会も参加したかったのですが、冷房で体の芯まで冷え冷えで凍えていたこともあり、後ろ髪を引かれつつも帰宅させていただきました。残念。

バージャーとティルダ

 本作は製作ティルダ・スウィントン。監督の違う四つの作品でバージャーを捕らえたドキュメンタリーとなります。

奥秋由美(OKUAKI STUDIO)の絵画作品
ティルダの娘が描いたドローイングと、それを嬉しそうに持ってポーズするバージャー

 作中、バージャーとティルダは終始仲良しさんです。黙っていたら近寄り難い風貌の二人ですが、柔らかい表情を見せ続けてくれるのです。バージャーとティルダは1989年の映画共演をきっかけに親しくなったとのことですが、残念ながらその映画は日本未公開なんだそうです。

二人は11月5日のロンドン生まれ、あと父親が軍人であるといった共通項が取り上げられていましたが、仲良くなった理由はそれだけではないはずです。少しずつ慎重に小さなピースを積み上げていくように互いを敬愛していったのでしょう。家族や恋人とは違う次元で認め合う間柄というか、うまく言い表せないのですが映像の中の二人を見ていればその “特別感” は一目瞭然だと思います。

バージャーの著書

 ジョン・バージャーの著書のうち、わたくしがチョロっと目を通したのは『イメージ / 視覚とメディア』と『ピカソ / その成功と失敗』の2冊です。チョロっとパラっと目を通しただけなので本の内容に関しては恥ずかしながら何も語れません…。恥ずかしいままでは成長は望めませんので、映画観賞後から『イメージ / 視覚とメディア』を読み直しています。

文庫本とメガネ

 映画の中でとても印象に残っているのは、両手で頭や目元を押さえながら次に発する言葉を探すバージャーの姿です。その姿をぼんやりと脳裏に投影しながら彼の著書を読むと、不思議なことに綴られた言葉が心地よいリズムを伴って頭脳に入ってくるのです。

 そもそもバージャーのことをよく知らずに『イメージ』や『ピカソ』を手に取ったものですから、著者が何者かなんてことは気にもとめておりませんでした。美術評論家だという事実は程なく知ることとなり、今回映画を見ての大発見は、彼が画家だということでした。他にも詩作、小説、戯曲、多岐にわたる表現者だということもです。それにバイク乗りでもあるのです!

バージャーの画板

 わたくしはやはり画家であるバージャーに大変興味を持ちました。彼の仕事部屋はあらゆるもので溢れており、それはまるで彼の頭の中のようです。

画板の説明図
バージャー愛用の画板

 何か思いつくと、机の上に無造作に置かれた画板を引っ張り出してドローイングします。その画板がまた素晴らしく魅力的なのです!額縁を改良したような、手作り感満載のかわいい画板です。その画板に紙をセットしてティルダの顔を描く場面は、こっそり覗き見をしているような、見てはいけないものを見たような、そんな不思議な感覚に襲われる印象的なシーンでした。

心に沁みる映画

 『ジョン・バージャーと4つの季節』は、はっきり申し上げて万人向けの映画ではございませんが、人生の後半に差し掛かった者には結構沁みる映画だと思いました。

晩年のバージャーを見ることで、自分は30代40代の時にどんな仕事をしてきたのか、どんな人たちと出会ったのか、何を見つめ、聞き、触れてきたのか、そういったことを考えさせられた気がします。今の自分は未来の自分を作っているのだと、ほんのりとした気づきを受け取ることができる映画でした。