芸大とムクロジ

 こんにちは、OKUAKI STUDIO です。

7月9日の日曜日、東京芸大の大学美術館で開催していた “台東区コレクション展” が終了いたしました。ご高覧いただきました方々には心からお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました!

台東区コレクション展の看板

ムクロジの木

 会期中わたくしは、3回ほどなつかしい卒業制作を見に美術館を訪れました。自分の作品をすばらしい空間でゆっくり見ることができたのは、とても嬉しい体験でした。

3回目に訪れた日、大学構内をちょっと散策させていただきました。というのも、数日前から「大きなムクロジの木を見たいな。」と思っていたからなのです。

ムクロジの木がある茂み
岡倉天心像を飲み込む樹木たち

美術学部の構内に岡倉天心像があり、それを取り囲むように木々がこんもりと茂っています。その木々の中にムクロジの大きな木があるのです。

 なぜにムクロジの木が見たかったのかと言うと、現在制作中の Art Book “ノラとわたしの庭” の表紙と本文ページの一枚に “わたしの庭” のモチーフとしてムクロジの葉を描いたからです。正確にはそのまんまのムクロジの葉とは違うのですが、イメージは確実にムクロジから生じたものです。

そして わたくしのお庭にもムクロジの木があります。しかもそのムクロジは学生だった頃、岡倉天心像の前で拾った種子から成長したものなのです。そういった経緯もあり、芸大のムクロジをまじまじと見つめたくなってしまった訳でございます。

ムクロジの実

 そもそもわたくしがムクロジの種子、と言うか実を家に持ち帰ったのは何故なのか?それは見た目が魅力的だったからなのです。

ムクロジの実
ムクロジの実

みなさまはムクロジの実をご覧になったことはありますか?

飴色で透けていて原始的なかたちをしていて、好奇心旺盛な人でなくとも「え?何コレ?」と見入ってしまうくらい不思議と惹きつけられる物体です。その結果わたくしもお家に持ち帰ってしまいました。

奥秋由美(okuaki studio)制作のイラスト

 ムクロジの実は飴色の実を破ると中から黒くてまんまるの種子が出てきます。

実は石鹸として使うことができます。実をいくつかまとめて網袋か何かに入れ、水を加えてモミモミすると泡立ってきます。とは言うものの、手を洗う時にわざわざムクロジを使う人は、めったにいらっしゃらないと思いますが。

そして種子、これは羽根つきの羽根の黒玉に使います。石鹸にしても羽根つきにしても、実際に使うことはきっと無いでしょうね。これは誰もが自然を上手く生活に取り入れていた時代の話なのかもしれません。今や石鹸は手をかざせば適量の泡が出てきちゃうのですから。

ムクロジの葉

 ムクロジの葉の話をします。Art Book“ノラとわたしの庭”にも描いた葉っぱです。

ムクロジは落葉高木です。秋には黄色くなった葉が落ちるのですが、いわゆる一枚の葉っぱが風に吹かれてパラっと落ちる、というより枝ごと落ちると言ったほうが表現としてはピッタリなんです。

奥秋由美(okuaki studio)制作のイラスト

ムクロジの葉は偶数羽状複葉といって、長細い小葉が7対くらい並んだものが一枚の葉となります。ですので 落葉する際も対になったまま落ちてきます。決して小葉が一つずつ落ちる訳ではないのです。実といい葉といい、不思議な木なんです。

今回 “台東区コレクション展” のおかげで芸大のムクロジのことを思い出しました。そして その大きな姿をゆっくりと見上げることができました。そしてそして わたくしの庭のムクロジの母にまた会いに行こうという気持ちが芽生えました。

それでは 今回はここまで、OKUAKI STUDIO でした。