顔料と顔料ペースト

 顔料と顔料ペースト日頃わたしは色々な色材を使って作品制作していますが、なかでもテンペラという絵具での制作に力を入れています。テンペラについてはこちらの記事で解説しています。

 テンペラは顔料+卵黄メディウムで自作するので必然的に様々な顔料を保持しております。今回はその中のひとつ、ホルベインから発売されている顔料ペーストについて解説と、わたしなりの使い方を紹介します。

使う人が限定される商品だと思いますが、「気になっていた」という方の参考になれば嬉しいです。

色の画材のもとは顔料

顔料とメディウムと色材のイラスト

 顔料は絵具や色鉛筆など、ほぼ全ての色材に使用されている色の粉末のことです。粉末なので撒き散らしてしまわないよう、使用時には細心の注意が必要ですが、顔料ペーストならその点は安心です。

この顔料に各種のメディウムを練り合わせたものが、水彩絵具や油絵具、色鉛筆やパステルとなります。ですので顔料とメディウムを持っていれば、各種絵具を自分で作ることができます。

始めから水練りしてある顔料ペースト

6本の顔料ペースト

 絵具を作る時、まず顔料を水練りします。軽い感じで顔料とメディウムを混ぜ合わせるのではなく、専用の練り台と練り棒を使って 滑らかになるまでしっかり練り合わせていきます。これは結構な力仕事になります。

ホルベインの顔料ペーストは、絵具になる前の水練り状態の商品です。始めから練ってあるので一仕事省くことができるし、撒き散らしてしまう危険性もありません

テンペラだったら卵黄、水彩だったらアラビアガム、アクリル絵具だったらアクリルエマルジョン、その他にも膠水やでんぷんのりなどなど、水溶性のメディウムを加えれば手軽に使いたい絵具を作ることができます

▼ 顔料ペースト使用時・購入時の注意点

・メディウムを加えることを忘れない
・メディウムは水溶性のみ
・ホルベインのアクリリックカラー[フルイド]と容器の形状が同じなので購入の際は注意してください。

有機顔料のペーストが便利です

 顔料ペーストのカラーラインナップは全20色、そのうち7色が無機顔料で、あとの13色は有機顔料です。無機顔料と有機顔料の成分的な違いについては残念ながら専門外となりますので、わたしがお伝えできる違いは以下となります。

①無機顔料の色は不透明で厚みを感じる
②有機顔料の色は透明感があり鮮やか
③無機顔料は水練りし易い(浸透する)
④有機顔料は水練りし辛い(はじく)

 ④だけネガティブなことを上げましたが、このことで有機顔料の色を避けていた人も多いのではないかと思います。

顔料ペーストは単に水練り作業の手間を省くだけでなく、悩みどころだった④も一気に解消してくれる優れものです。顔料から練る時は、エタノールを加えたり、直接メディウムで練ったりなどの工夫をして水と馴染ませなければならなかったからです。

特徴を生かして表現の幅を広げる

 テンペラ作品の色の特徴として『乾いた色』『発色の良さ』が上げられます。テンペラは描いている時は水分を含んでいるので濡れた暗めの色をしています。しかし水分が蒸発すると絵具の色は乾き色になり、顔料の時の発色に近くなります。それが特徴であり魅力でもある一方、油絵のように透明な絵具層を重ねて深みを出すことには不向きなのです。

キャンバスと絵具のイラスト

 透明な絵具層が必要なら油絵具やアクリル絵具に切り替えればいいのですが、顔料ぺーストを使えばテンペラでの透明層の添加も可能になります。油絵具やアクリル絵具の透明感からすればクオリティは低いですが、テンペラ画としての表現の幅と可能性は広がります。

 わたしはこの有機顔料の色をグレーズに使っています。メディウムの量に気を使わないと望んでいた効果は得られませんが、テンペラだけで様々な色質を作り出していく楽しさは以前より広がっています。

ひとつだけ気になる点

 これは仕方がないことだし、わたしだけが気にしているのかもしれませんが、容器の抽出口とフタにどうしても残る顔料についてです。

使ったあときれいに拭き取っているつもりでも、数日後にフタを開けると乾いて固まった顔料がパラっと落ちることがあります。絵皿やパレットに落ちる分には問題ないのですが、他のところに落ちたことに気付かなかった場合がイヤというか、気になるというか、やっかいなのです。

顔料ペーストは先にも書いている通り、顔料の水練りなので、乾けば単なる顔料に戻ります。ですのでパレット以外に落とした時、または落ちたかも!という時はコロコロですぐにお掃除するようにしています。

 今回はホルベインの顔料ペーストについて解説しました。内容をまとめると以下になります。

・ペースト状(粉末ではない)なので、散布の危険性がない
・様々な水性絵具を作ることができる
・水練りの手間が省ける(特に有機顔料)
・乾いた固まりを落としたら、すぐ掃除

 気になっていた方はお好きな色をまず一本買って試してみてください。何色か決めかねる場合は白、チタニウムホワイトがいいと思います。