“死んだかいぞく” 100分の音楽劇

 こんにちは、OKUAKI STUDIO です。

もうすぐ8月、夏なのでとっても暑い日々が続いております。そんな中わたくしは、飲み物と汗拭きの手拭いを持って「死んだかいぞく」という音楽劇を、彩の国さいたま芸術劇場へ見に行ってまいりました。

海賊のドクロ旗
クロス・ボーンズは海賊のトレードマーク

最近買った絵本

 音楽劇「死んだかいぞく」は下田昌克さんによる絵本が原作です。この絵本は数年前から本屋さんでよく目にしており、つい最近購入しておりました。表紙は真っ黒でタイトルと海賊のシンボルマークである頭蓋骨と交差した大腿骨2本が白であらわされており、非常にシンプル。平積みされていると「ん!何だ?」と目に入る。そして「かいぞくのお話」であることも一目瞭然。

いつも気になってページをめくるも購入には至ってなかったのだけれど、先日ついに会計を通したのです!それが舞台になっていると知ったときは「見たい!」の気持ちしかありませんでした。

当日券を求めて

 さて、最近ではウェブサイトから座席の予約をするのが一般的ですが、わたくしは当日劇場で購入するのが好みなのです。人に言葉をかけて直接やりとりして購入するのが好きなのです。もし座席が無くなっていてもそれはそれ、「そういった事も楽しめばいい!」と強がりながらも、じつは当日券が残っていることを心の底から願いつつ劇場へ向かったのでした。

開演の40分前から当日券の販売が開始。空いている座席は少ししか残っておりませんでしたが、大好きな最後列の席を確保することができました。わたくしはどんな時も一番後ろが大好きですので、この席が空いていて本当に幸運でした!

久しぶりの “彩の国さいたま芸術劇場”

 彩の国さいたま芸術劇場は何度かダンスや演劇を見に来ていて、初めて見たのがヤン・ファーブルの「わたしは血」だったと思います。そして劇場の芸術監督がコンドルズの近藤良平さんになってから初めて訪れたような気がします。

とにかく久しぶりのさいたま芸術劇場、しかも「死んだかいぞく」の公演は小ホール、わたくしは大ホールしか入ったことがなく小ホールは初でした。そんなこんなでワクワク感と緊張感が入り乱れて、開演までのあいだ何だか落ち着かなかったのです。

海賊と一緒に海に落ちる

 いよいよ開演となり、明かりが全て消え、会場が真っ暗になりました。そしてお客さんたちの騒めきが消えてシーンと静まり返り…、と言いたいところですが、「死んだかいぞく」は絵本が原作の音楽劇、お子さまたちもいっぱい見に来ているのです。

一瞬静かになりましたが直ぐに「こわい〜」とか「きゃー」とか「くらい〜」とか「やだー」とか、じつに素直な言葉が飛び交います。しかしきっとこれも想定内なのでしょう、ざわめきに怯むことなく淡々と劇は始まったのでした。

ゆるいメロディーが流れてきました。ゆらゆらとゆらぎのある歌声は海賊が沈んでいく海のゆらぎと重なります。海賊が沈んでいく間にサメやしわしわで歳をとった魚や長い尾鰭の小さな魚やタコやアンコウやたくさんの魚たちに出会います。舞台を見ていた100分の間、わたくしは海賊と一緒に海深く落ちていくような気分になったのでした。

奥秋由美(okuaki studio)制作のイラスト
海に沈んでいく海賊が遭遇する海の生き物たち

 原作の絵本「死んだかいぞく」は、海に落ちた海賊が徐々に深く深く沈んでいく様子を色で表しています。ページをめくり物語が進んでいく、つまり海賊が海底に近づくにつれて背景色が青から黒へ移り変わっていくのです。音楽劇「死んだかいぞく」では、それを照明や音楽や舞台装置や小道具や役者さんたちの動きで表現していて、もう一回、いやいやもう二回、じっくり見たいな〜と思わせる楽しさでした。

絵本ファンのお客さま方をガッカリさせないように並々ならぬ努力と工夫をされたのだと思います。久しぶりに舞台を見ましたが、やっぱりいいですね!演技を直接見るのは圧倒的な衝撃があります。ひとつの物語が繰り広げられる空間に演者と観客が存在し、それにより成り立つ特別な時間なのだとあらためて痛感しました。

絵本と演劇

 絵本を原作としたこのこの音楽劇は、脚本・演出のノゾエ征爾さんによって新たなシーンが加えられ、クスッと笑ってしまう場面あり、何となくはっきりとしない哀しさがフワッと押し寄せる場面ありで終始引き込まれっぱなしでした。

ノゾエ征爾さんは「ボクの穴、彼の穴。」という絵本も舞台化してらっしゃることを知りました。その舞台の公演が9月にスパイラルホールであるというので、見に行こうと思います。当日券は期待できそうにないので、チケットぴあ、イープラス、ローソンチケットのいずれかで購入いたします。