オペラへの興味

 こんにちは OKUAKI STUDIO です。わたくしは気に入った映画やドラマを何度も見ます。飽きもせず何度も何度も見るのです。そして物語の中で扱われている様々な素材に心を奪われます。例えば劇中のある場面で部屋に飾られた絵画や流れている音楽、積み上げられた本、机の上の書類やペンなどの文房具、様々です。

そして最近、オペラに興味が出てきたのです。

マニラフォルダ

 まず最初に「マニラフォルダ」の話をさせてくださいませ。ずいぶんと前のことでございます。15年は前かな…。

 FBIや市警を舞台にしたドラマで必ず出てくる生成りや未晒し色のフォルダをご存知でしょうか?わたくしはそれに魅了されたことがあります。そのフォルダは「マニラフォルダ」と言い、PCのフォルダアイコンでお馴染みのどこにでもある紙製のフォルダです。

しかし日本の文具メーカーのものはイメージがちょっと違います。無印良品で売っていたものはかなりいい線いってたのですが、何やらしっくりこない。質感が違うのです。

 当時どうしようもなくマニラフォルダが欲しくなったわたくしは、さっそく探し始めました。「そうだ、Office DEPOT にあった気がする!」と、幾つかの店舗を訪ねましたが、なんとOffice DEPOT は姿を消しておりました…。

Office DEPOT はアメリカの文具やオフィス関連の商品を売ってるお店で、あちこちにあったのですが…、どうやらわたくしが知らないうちに日本から撤退していたようです。「買っておけば良かった」と激しく無念を感じたのを昨日のことのように思い出します。

「紙製フォルダなんてどこ製でも同じだろ!」と思うかもしれませんが違うのです。日本のはA4サイズで紙がしっかりしています。あと表にいろいろ印刷がある。マニラフォルダはレターサイズで、日本のより柔らかにしなります。そして色は基本的に生成り色です。

 今では日本amazonとかでも扱ってるようですし、欲しい場合はすぐに入手できますね。それが良いのか悪いのかは分かりませんが…。

奥秋由美(OKUAKI STUDIO)の制作のイラスト

フィラデルフィア

 マニラフォルダのことを長く語り過ぎました。ここからやっとオペラの話題に入ります。

とにかく、わたくしはストーリーやキャラクターではなく小道具的なものに入れ込む傾向があり、最近ではオペラが気になっている、と先にも記させていただきました。それというのも映画《フィラデルフィア》と、TVドラマ《アストリッドとラファエル》を繰り返し見ていたことにより、少しずつ少しずつ気になってきたのです。

 フィラデルフィアはとても素晴らしい映画ですよね。監督はジョナサン・デミ、彼が手がけた映画には《羊たちの沈黙》があります。こちらも大好きな映画で、何度も見ています。

 フィラデルフィアを見ていて痛感するのは、知らないものへの恐怖と排除です。主人公はトム・ハンクスが演じるアンドリュー・ベケット、そしてデンゼル・ワシントンが演じるジョー・ミラー、二人とも弁護士です。ベケットはエイズを発症しており、そのことで巻き起こる様々な人間模様を描いた映画です。

 映画の中のとても重要なシーンで、マリア・カラスが歌う《アンドレア・シェニエ》の “ La mamma morta “ が流れます。このシーンでのベケット(トム・ハンクス)が痛々しく見ているだけで辛くなります。そしてそれをただただ無言で見つめ続けるミラー(デンゼル・ワシントン)の瞳の奥に何かを感じます。

そうです、言葉を全く発していないのにミラーの思いが伝わってくるのです。これは二人の演技だけでなく、まさしく“ La mamma morta “ が背景に流れていることで訴えかける力が倍増しているのです。

もちろんわたくしは アンドレア・シェニエ は見ておりませんし、ストーリーも簡単な解説しか読んでおりません。にもかかわらず確実に伝わってくるのです。

このシーンをもっと理解したくて「これは、アンドレア・シェニエを鑑賞しなければ!」と思ったのです。

アストリッドとラファエル

 さらに《アストリッドとラファエル》ですが、シーズン5で《ニーベルングの指環》が出てきます。これはオペラを見に行くシーンがあるとか曲が使われているではなく、「ニーベルングの指環を見に行くんだ。」というセリフがあるだけです。

何気ないこのセルフはニコラというキャラクターが発したものです。ニコラはラファエルと一緒にオペラを見る予定を立てていたのです。

ラファエルはオペラとは縁遠いタイプのキャラクターですので、これは凄いことなのです。彼女は ”ニコラと一緒に見るニーベルングの指環” を受け入れているだけですが、実は天地もひっくり返るほどありえないことが起こっている、または始まろうとしている、といったざわめきを表している様にも思えます。

 そういった流れから「これはニーベルングの指環を鑑賞しなければ!」と思うに至った訳なのです。ラファエルと同様、わたくしもオペラのことは何も知らない状態です。しかしニーベルングの指環は頭脳の片隅の片隅に引っかかっていました。

ゴードンゴードン先生

 こちらもずいぶん前に(10年くらい前かな)NHKで《ワーグナーとユダヤ人のわたし》というドキュメンタリーを放映していました。これを見たのはワーグナーが好きだからとかではなく、進行役のスティーヴン・フライ氏に反応したためです。

フライ氏はTVドラマ《BONSE》で精神科医のゴードンゴードン先生を演じていた人です。彼は自身がユダヤ人であることとワーグナーファンであることに苦悩しながらも、ニーベルングの指環の上演に心を踊らせます。子供のようにはしゃぐ姿が印象に残っておりました。

 「こんなにも好きな気持ちを抑えられなくなるなんて、ワーグナーって、ニーベルングの指環って何なんだ!」と思いました。それが頭脳の片隅の片隅にずっと住み着いていて、アストリッドとラファエル のニコラのセリフによって記憶が呼び起こされた訳なのです。

オペラに心が動き始めた

 数日前の9月1日、日付が変わったばかりの時刻からある番組を見ていました。それはバイロイト音楽祭で7月25日に上演された《ニュルンベルクのマイスターシンガー》というオペラです。

今思い出すに、スティーヴン・フライ氏がドキュメンタリーで訪れていたのも、バイロイト音楽祭だったような気がします。わたくしはこの放映(ニュルンベルクのマイスターシンガー)をしっかりと録画し、既に数回鑑賞しています。

とてもポップでカラフルな舞台装置と衣装で、初めて本気でオペラを見る者としては、舞台のあちこちで対比し合う色彩を感じながら楽しく鑑賞できました。

 そしてさっそく一つ学んだことがあります。どうやら ニュルンベルクのマイスターシンガー は”楽劇” と言うらしいのです(ニーベルングの指環も)。ややこしいですが少しずつ勉強していこうと思います。

 今回はとっても個人的なご報告となり恐縮でございます。以前は全く興味を抱けなかったオペラが気になり出した、ということ。そして見に行く予定も立てている、ということ。みなさまには本当にどうでもいいことですよね。お許しくださいませ。でも実際に鑑賞しましたら、懲りずにまたご報告いたします。