作品no.9 “ファントム” と “まぼろし”

 こんにちは、okuaki studio です。今回は作品紹介をしたいと思います。2023年に完成させた “ファントム”“まぼろし” でございます。

この2点はウォーターフォード紙の638g/㎡という 極厚の水彩紙を支持体としております。ウォーターフォード紙は高級水彩紙なのですが、わたくしはこの紙に石膏地を施しテンペラ画をよく描きます。板やキャンバスなどと比べると、紙は軽くて薄いので保管が楽なのです。

“ファントム” と “まぼろし”

 “ファントム” と “まぼろし” はクジラのような姿を描いています。ファントムはマッコウクジラ、まぼろしはザトウクジラをモデルにしており、うっすらと光の影響を受けた青い空間をゆったりと移動している様子を表しまています。青い空間はあくまでも青い空間であって、海の中という訳ではないのです。金色の絵具で表した海藻のようなものも、クジラの移動に合わせてゆらいではいません。言うなればこの空間は “クジラのいるべき場所” と言った感じでしょうか。

奥秋由美(OKUAKI STUDIO)の絵画作品
“ファントム”
奥秋由美(OKUAKI STUDIO)の絵画作品
“まぼろし”

 わたくしは小さな子供の頃から “なぜ自分は自分なのか?” と考えることが時折ありました。そんなことを考えるのは決まって何もしていない時、窓から差し込む光に埃や塵がキラキラと輝く様子を ぼんやり見つめたりしている時でした。何かに夢中になっている時には自分の存在を疑ったりしなかったのです。ファントムとまぼろしは、ふいに訪れる自分という存在が宙に浮くような、何者なのかが分からなくなるような、そんな状態を表現しているのかもしれません。

絵と文章

 ここ数年、わたくしは作品に短い文章を付けておりまして、この2点も例に漏れず考えてあります。以下 “ファントム” と “まぼろし” のイメージ文になります!

奥秋由美(OKUAKI STUDIO)の絵画作品
“ファントム”

ゆっくりと移動する大きな青い影
ぼくが見ているのは現実なのか
それとも幻なのか
上も下もわからないけれど
網膜が受け止めているこの光が
美しいことだけはよくわかっている
奥秋由美(OKUAKI STUDIO)の絵画作品
“まぼろし”

ゆらゆらとゆれる植物
わずかな光を受けて
ところどころ金色に輝く
このゆらぎを作っているのは
おおきなクジラ?
ぼくは夢を見ているのだろうか

作品データ

タイトル:ファントム
制作年:2023年
素材:ウォーターフォード水彩紙・石膏地・練り込みテンペラ絵具・アルキド樹脂絵具・色鉛筆
サイズ:180×525mm
タイトル:まぼろし
制作年:2023年
素材:ウォーターフォード水彩紙・石膏地・練り込みテンペラ絵具・アルキド樹脂絵具・色鉛筆
サイズ:180×525mm